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「五月病」にならないために

Kurabayashi

「五月病」にならないために/国立駅大学通りの新緑の写真/カウンセリングオフィスフロローグのコラム

 新年度が始まり1か月が経ちました。先日、ある学校の1年生のクラスで授業をしていると、息切れしないか心配に思う生徒さんがおりました。それはクラスに馴染むために無理して振舞っている感じが伝わってきたからです。「もっとのんびりで大丈夫よ」と声をかけたくなりましたが、そこは担任の先生にそれとなくお伝えするに留めました。

 皆さんは、新しい環境に馴染むために、人との距離の取り方や接し方について考えたり迷ったりしたことはありませんか?初めての人や物事に出会うのに、不安感や緊張感は当然のことと思います。しかし、なかなかうまく馴染めずに、良くない気持ちが続いてしまうと、心身の健康が損なわれる深刻な問題になりかねません。

 ゴールデン・ウィーク明けのことを考えると、「学校や仕事に行きたくないなぁ」と嫌な気持ちになる方も少なくないと思います。このコラムでは、「五月病」の対策についてお伝えしたいと思います。

  1. 「五月病」には、どうしてなるの?
  2. 「五月病」になるリスクが高い方
  3. 「五月病」にならないために

1.「五月病」には、どうしてなるの?

 新年度が始まると、職場、学校、家庭、地域など、私たちを取り巻く様々な環境に変化が生じます。私たちは、その新しい環境に自分を合わせようと一生懸命に頑張ろうとします。それでもなかなか新しい環境に馴染めないと無力感や不全感を感じたり、不安感や緊張感を感じながらもっと頑張らなければならないと無理をしてしまう、その疲れが後からやってくるのです。脳が疲弊するとセロトニンやドーパミンといった神経伝達物質を上手く調整できない状態になり、心身に影響を及ぼすことになると言われています。

 最初は、何となく体がだるい、何となくやる気にならない、何となく楽しめないといったように、なんとなく普段通りではないけれど病院に行くほどでもない違和感から始まります。はっきりした理由が見当たらないままそれが続いて、体調不良(頭痛・胃痛・腹痛・眩暈)や、睡眠不良(寝つきが悪くなる・夜中に目が覚める・朝方早く目が覚める・熟睡できない)、気分不良(滅入る・億劫になる・イライラする、集中できない)といった症状になり、学校や仕事に行くことや、家事や日常生活に支障をきたす状態になって行くのです。

2.「五月病」になるリスクが高い方

  • ◎つい周囲の人に合わせてしまう過剰適応の性格の方
  • ◎慣れるのに時間がかかる変化に弱い方
  • ◎完璧主義で理想が高い方
  • ◎在宅勤務やリモートワークから、出社メインの勤務に働き方が変わる方
  • ◎マスクを外すのに抵抗がある方
  • ◎受験で燃え尽きて、新しい学校生活で次の目標が見つけられない方
  • ◎新しいクラスになり、先生やクラスメイトにうまく馴染めていない方
  • ◎結婚、出産、引っ越しなど、プライベートで変化のあった方
  • ◎子供の受験、卒業、入学があり、慌ただしくしてきた親御さん
  • ◎進学、就職、転職など、4月から新しい生活が始まった方
  • ◎自分に変化がなくても、上司や同僚が異動して職場の雰囲気が変わった方
  • ◎昇進・昇格して、求められる責任の範囲が大きく重くなったと感じる方


3.「五月病」にならないために

 環境の変化により、心身ともに緊張している状態が続くということは、普段よりもエネルギーを多く使いながら生活していることになります。しかし、その真っ只中にいるときは、目の前のことに追われて忙しく、気分が高揚していることもあり、エネルギーを多く消耗していることには無自覚な人が多いようです。苦しいことや悲しいことといったネガティブな変化であれば感じやすいのですが、新しいことや期待をかけられて嬉しいといったポジティブな変化に対しては、疲労感を感じにくくなります。そのため、つい無理をして、適応力のキャパシティを超えてしまうことが懸念されるのです。

 まず、環境になんらかの変化があった人は、自分は普段より疲れているかもしれないと自覚することが必要です。
 毎日の睡眠時間を十分に確保する、その上で、心身ともにリラックスして緊張を緩めることができるように充分な休息をとることが大切でしょう。休日は、旅行や用事などで全日程を埋めることがないように、疲労を回復するための休息日を設けるように心掛けて下さい。
 何か新しいことを始めるということは、環境の変化を重ねることになります。新たな緊張による疲労蓄積につながることにもなるので、開始時期については慎重な判断が必要と思われます。

 次に、安定した生活リズムを保つことが大切です。
 起床時間と就寝時間、食事のタイミング、入浴時間といった生活の基本リズムを崩さないように心掛けましょう。運動やリフレッシュ・タイムなどの日課をお持ちの方は、とても大切ですのでいつも通りにこなしましょう。
 忙しかったり疲れていると、つい自分のルーティーンを省いてしまうことありませんか?そんな時は、心のキャパシティに余裕がなくなっているのかもしれません。自分の大切な時間を削るのではなくて、課題の量や期限の調整を試してみてください。

 もし、「学校に行きたくない」、「会社に行くのになんとなく抵抗感がある」、「なんだかだるくてやる気がしない」など心身の不調がでてきたら、「適応障害」の可能性もありますので、早めに心の専門家に相談することをお勧めします。
 環境の変化に要因のある方は、変化(=ストレス)への対処方法についてカウンセリングを受けたり、緊張を緩める(=リラクゼーション)トレーニングを受けるなど、何らかの対応方法を会得することが有効と思われます。
 自分自身の性格傾向や考え方に起因していると思われる方は、自分の中で何が起こっているのかを紐解いて、自分の価値観や人生観を見直し、これからの生き方について洞察を深める心理療法を受けてみてはいかがでしょうか。

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